2018月分(平成30)年度 第1回授業

 

 

2018(平成30)年度子ども大学かまくら第1回授業

「鳩サブレ―どこから食べる?」

講師 久保田陽彦(はるひこ)先生 豊島屋社長

2018年5月13日(日) 鎌倉芸術館小ホール

 

 

(授業レポート)    

 

(みな)さん、こんにちは。(わたし)は、今から124年前の明治27(1894)年に創立(そうりつ)した(はと)サブレーを作っている豊島屋社長の久保田です。四代目の私は、若宮(わかみや)大路、

  (だん)(かずら)のところにある豊島屋 本店で生まれ育ってきました。大学を卒業し、銀行に(つと)めてから豊島屋に(もど)り、笛田にある工場で十数年過ごし、本店の店長などをして、現在に(いた)っています。

 

 

日本で初めて登場したバター味のお菓子(かし

明治時代に始めた豊島屋は和菓子(わがし)屋でした。来年で125周年を(むか)えます。その和菓子屋が、なぜ鳩サブレーをつくるようになったのか。

 実は、私のひいおじいさんの久保田久次郎が、外国人からもらった大きなビスケットのようなお菓子を食べたらおいしい。自分でつくってみようと思ったが、レシピもないし作り方も分からない。そこで自分の舌を(たよ)りに試行錯誤(さくご)()り返しバターを使っていることが分かりました。

当時、バターはどこにも売っていません。横浜の異人館(いじんかん)で手に入るという話を聞き、バターを手に入れてお菓子を作ってみました。そのお菓子を日本郵船(ゆうせん)の船長に試食してもらったら、「フランスで食べたサブレーというお菓子に似ているな」と言われ、鳩サブレーが誕生(たんじょう)したのです。

 しかし当時は売れませんでした。バターの味が日本人にはなじめなかったようです。大正、昭和に入って、小児科のお医者さんが「子どもの栄養食にいいよ」と(すす)めてくれて、やっと認知(にんち)されるようになったのです。

  

正解はない鳩サブレーの食べ方

鳩サブレーの食べ方に入りましょう。みんなはどこから食べるかな。頭からの人は手を挙げてみて。多いな。しっぽのほうは。いっぱいいるね。おなかから。羽からもいる。実は正解はありません。ぼくの食べ方はふくろの真ん中を開けて、鳩サブレーの真ん中を折ります。そして断面を見て、今日のでき具合をチェックして食べる。だから、いつも「おいしい」よりも「でき具合」を気にして食べています。

 

   

さまざまな工夫と仕掛(しか)けがある包装(ほうそう)

  鳩サブレーの包装には、()れないようにいろいろな仕掛(しか)けがしてあります。鳩サブレーの包みは、(どう)の下のところがくっついていて、動かないようになっています。

また入れ物も、衝撃(しょうげき)吸収(きゅうしゅう)させるため、一枚目(まいめ)と二枚目のトレーの間に中敷きを入れています。この中敷きはコースターやメンコにも使えます。

  パッケージは基本的に黄色の地に白い鳩が入っているデザインです。ただ本店には本店限定のパッケージがありますし、お正月には干支(えと)にちなんだパッケージも作っています。

 

初代が決めた味、形、大きさは変えません

 

 鳩サブレーについて「小さい鳩サブレーは作らないんですか」という質問がよくあります。この大きさしか作りません。初代が決めた味、形、大きさは、変えません。

  しかし、さっき、「小さい鳩サブレー知ってる」と発言した子がいました。たぶん、それは「小鳩(こばと)(まめ)(らく)」という落雁(らくがん)だと思います。和三(わさん)(ぼん)(とう)という日本古来の砂糖(さとう)と豆の粉を使って作っています。

 

「きざはし」というお菓子は、鎌倉のお寺の石段(いしだん)をイメージして作っています。鎌倉石は(やわ)らかい砂岩(さがん)なので、長年、たくさんの人たちが歩いているとすり減ってきます。

銭洗(ぜにあらい)弁天にちなんで、「銭洗いの(いずみ)」というそばボーロもあります。鎌倉にちなんだお菓子を色々と作っています。

 

 

鎌倉の四季をイメージした和菓子

 

このように、豊島屋は鎌倉をイメージした四季を(かな)でる和菓子を毎月、工夫しながらたくさん作っています。

春は桜の花びら、秋はイチョウ、冬は雪です。「和賀(わが)江島(えじま)」というお菓子は、鎌倉にある日本で一番古い築港にちなんだ貝の形をした落雁のお菓子です。貝には青のりを使っています。鎌倉五山という生菓子は、建長寺、円覚寺、浄智寺、浄妙寺、寿福寺の五つのお寺にある釣鐘(つりがね)をイメージしたもので、五種類の(あん)を使っています。

四季に出している生菓子には、各月ごとに鎌倉をイメージする名前がついています。

1月は「風花」。雪です。雪の結晶に見立てて、上が(にしき)(たま)、下が羊羹(ようかん)です。

2月は「おとずれ」。梅です。

3月は「夜桜」と「爛漫(らんまん)」……といった具合で、月ごとに季節を(いろど)った生菓子が数えきれないほど作ってきました。

 

 

 

(休憩)

 

(休憩の後、二人の菓子職人によって、生菓子の型どりや花びらを作る実演があった)

 

 

鎌倉市民に喜ばれるおいしいパンを

 

豊島屋は神奈川と東京に店を開いています。笛田の工場は鳩サブレー、岩瀬の工場は和菓子専門(せんもん)の工場です。

店には特色を持たせています。鎌倉駅前の(とびら)店ではパンを売っています。

なぜパンを始めたのか。第二次大戦後の食糧(しょくりょう)不足の時代に、配給公社から(たの)まれて豊島屋は電気菓子(かま)を使ってパンを作ったことがあります。父も「ただパンの形をしているだけで、おいしいパンではなかった」とこぼしていました。

そんな思いもあり「おいしいパン」を作りたくて、また地元の人たちにも毎日食べて(いただ)けるようなものを作りたくてパンを製造販売(はんばい)しています。

 

鎌倉大好き、みんな笑顔で

豊島屋は、店ごとに特色を持たせています。本店の(うら)にある八十小路では甘味処(かんみどころ)をやっていて、段葛桜餅(さくらもち)とわらび餅など、注文を受けてから作って出しています。

本店の(なな)め向かいにある置石店は洋菓子専門(せんもん)で、モンブランは和風(くり)と洋風栗の二種類、二階の喫茶店でしか食べられないエクレアも作っています。

私は鎌倉が大好きで、鎌倉に住んでいる人、(おとず)れる人、働いている人、みんなが笑顔になれるように一生懸命(けんめい)頑張(がんば)っています。

  


 

 

  質問コーナー◇

 

 

 

Q.6年生 鳩サブレーにこだわりはありますか

 

久保田先生 こだわりと言うよりも、お客様のために、今よりもっといい材料を集め、もっとおいしくするためにがんばっています。

 

 

 

Q.5年生 八幡(はちまん)様に(ねこ)や犬がたくさんいたら、猫サブレーや犬サブレーになっていましたか

 

久保田先生 ただ八幡様の神様は、鳩の姿になって地上に()りてきたと言われています。しかし初代が、犬がいいと思ったら犬サブレーになったかもしれませんね。

 

 

 

Q.4年生 そうすると鳩サブレーを食べると、神様を食べることになりませんか

 

久保田先生 すごい質問ですね。(笑)神様ごめんなさい。(笑)

 

 

 

Q.4年生 鳩サブレーを作ることで大変なことは何ですか

 

久保田先生 一枚の鳩サブレーと君たちのお母さんが作ったクッキーとどちらがおいしいか。愛情のこもったお母さんのクッキーがおいしいに決まっています。私たちはそれに負けないように一生懸命心をこめて作っています。

 

 

 

Q.4年生 一番好きなお菓子は何ですか

 

久保田先生 鳩サブレーに決まってるじゃないですか。(笑)

 

 

 

Q.4年生 鳩の頭の方向が、焼くときに(ちが)いがありますか

 

久保田先生 全部同じ。違いがあったらニセモノです。シッポやクチバシは焦げやすいので気をつけて作っています。

 

 

 

Q.4年生 いま、考えている新しいお菓子はありますか

 

久保田先生 それは企業(きぎょう)秘密(ひみつ)。(笑)毎月、上生菓子は変えているし、いま、楽屋でも職人と新しいお菓子について話してきました。

 

 

 

Q.4年生 豊島屋のお菓子は全部で何種類ありますか

 

久保田先生 その月しか出さない生菓子もあり、常時、100から200種類つくっているかな。

 

 

 

Q.5年生 鳩サブレーの豆知識で工夫していることは

 

久保田先生 包装やトレーでさまざまな仕掛けを考えたりしています。

 

 

 

Q.4年生 どうして店を()ごうと思いましたか

 

久保田先生 もの作りが大好きで、お菓子作りも商売も大好きでした。自分がやらなくては(だれ)がやるとの気持ちもあり()がせて(いただ)きました。

 

 

 

(文責・横川和夫、写真、島村國治)