2019年度(令和元年度) 第4回授業

2019年度・子ども大学かまくら第4回授業

 

「洋服で得する人、損する人」

 

講師  貞末奈名子先生(メーカーズシャツ鎌倉常務取締役)

 

2019年12月7日(土)  鎌倉学園  星月ホール

 

 

(授業レポート)

 

 

 

  皆さんこんにちは。私は鎌倉第二小学校を卒業しました。今から27年前、両親が突然(とつぜん)シャツ屋をやると言い出し、鎌倉市内にあるファミリーマートの2階に店を出したのです。お父さんが着るビジネスシャツ、ネクタイ、女性もののシャツを販売しています。全て日本製で、福島、四国、九州など日本各地の縫製(ほうせい)工場で作っています。

 

 最初は1日に2,3枚しか売れませんでしたが、それが今では日本には27店、海外ではニューヨークと上海に2店、合計30店近くになり、1年間に60万枚も作り、販売(はんばい)しています。最初にビデオで、どんな会社かを紹介(しょうかい)しますね。

 

 

(ビデオを上映)

 

 

男の子に間違えられ悲しい思い

 

私は25年ほど前に鎌倉シャツに入り、ニューヨークに店を出して7年、この11月には上海にも店を出しました。きめ細かい配慮(はいりょ)で作られている日本製シャツは、外国の人に評判がいいのです。

 

これから皆さんが毎日着ているお洋服は、どんな役割(やくわり)を果たしているのか、日常生活でどんな影響(えいきょう)があるのかを私の体験を(ふく)めてお話します。

 

私の両親は鎌倉シャツを創業(そうぎょう)する前は、アメリカで流行したIVYルックを一番初めに日本に紹介した会社に(つと)めていました。そのため私は小さいときから、お洋服の仕事に(たずさ)わる両親に育てられ、大人になったのです。

 

両親がすすめるのは(こん)とかグレーとか地味な色のお洋服が多く、アニメのキャラクターが入ったトレナーなどは着せてもらえませんでした。(かみ)の毛はショートカットだったので、ネイビーのお洋服を着ると、男の子と間違(まちが)えられて、悲しい思いをしました。

 

 

洋服で人生の生き方が違ってくる

お洋服は自分が好きであるよりも、相手から見てどう見えるかを、おさないときに無理やり、たたきまれて育ったのです。例えば小学校のときに、好きなお洋服を着て学校に行こうとすると、「ちょっと待った」と両親からばれて、上から下までチェックされ、「この服と、これは合わないから取り換えてらっしゃい」と注意されるわけです。そういう経験は、皆さんもありませんか。

 

学生=「ある」「たまにある」

 

けっこうあるんですね。お洋服は自分自身がよいと思っても、お洋服のルールをわかっている人から見ると、おかしいことがたくさんあります。

 

そういうことを教えてもらいながら、自分でも勉強して大人になっていく人と、無頓着むとんちゃくのまま育った人とでは、人生の生き方が違ってくると私自身の体験から感じています。

 

 

ニューヨーク店の不思議な光景 

ニューヨーク店で展開てんかいされる不思議な光景にびっくりしたことがあります。お洋服について欧米おうべい諸国しょこくは先進国です。江戸時代までは着物を着ていた日本は、歴史が浅い。そのためニューヨークのお店に来るお客様は、お洋服について造詣ぞうけいが深いのです。

 

おどろいたことに十代の男の子も大人に連れられて買い物に来るのです。そしてお父さんに「きちんと正しく、いいものを着なさい」と言われて、鎌倉シャツを買っていくのです。

 

日本では、鎌倉シャツの店に来る子どもはほとんどいません。このように欧米では小さいときから、自分できちんとしたものを身に着ける習慣ができているのです。

 

どんな人かは見た目で判断

 

お洋服は、その人を形づくる、印象づける役割やくわりがあります。今、あそこにスーツを着て、ネクタイをしているおじさんがいます。どんな人だと思いますか。

 

学生=「なんか編集している人」「サラリーマン」

 

そうですね。スーツを着て街を歩いていたら、「お勤めしている人かな」と、その人を知らなくても、何となく想像できます。今日は皆さん、私服しふくですが、制服を着ていたら、あの学校に通っている小学生だ、と見ただけで判断できます。着ている制服を見ると、警察官けいさつかん、宅急便の配達をしている人と、すぐにわかります。それほど服装は、相手に対し発信力があるのです。

 

「人間は中身が大切」と言われますが、外見も大事なのです。初対面で、どんな人かを判断するのに外見から情報を得る人の割合わりあいが90%というデータがあります。多くの人は見た目で判断しているのです。つまり皆さんが身に着けているお洋服は、それほど大事なものなのです。

 

 

 

大切な洋服の組み合わせ

 

皆さんは中学、高校生になると制服を着て学校に通い、大学生になって初めて自分でお洋服をコーディネートすることになります。今のうちから好きなものだけでなく、色などの組み合わせのルールを知っているだけで、自分自身がよりすてきに見えることを学んでください。そして家に帰って、今あるお洋服を出して、その組み合わせを考えたり、お父さんのシャツとネクタイをコーディネートしたりして、月曜日には、「この組み合わせで、どうですか」と、提案してみてください。 

 

貞末先生 それでは質問です。おしゃれが好きな人いますか。どんなところが好きですか。

 

学生(男子) おもしろそうに見えたり、かっこよく見えたりする、なんか印象がいい。

 

貞末先生 どんなところに気をつけていますか。

 

学生(同) 洋服の色とかに気をつけています。

 

貞末先生 ちょっと立ってみて。全部、青でコーディネートしていますね。

 

学生(同) 紺とかが好きです。

 

貞末先生 似合いますよ。いつも着るお洋服はだれに買ってもらいますか。自分で買う人。

 

学生(女子) 質問。それって、自分でお金を出して買うっていうことですか。

 

貞末先生 いや、お金をもらって買いに行く人という意味です。お父さん、お母さんに買ってもらう人はいますか。多いですね。どこに買いにいくのかな。

 

学生() 専門(せんもん)店とか。

 

ブルーベースとイエローベース

 

大きく分けると、皆さんはブルーベース(青っぽい色)か、イエローベース(黄色っぽい色)の2つに分かれます。ブルーベースの人は、赤でも黄色でも青でも、グリーンでもブルーベースの色の中で合わせてしまえば、洋服の組み合わせはきれいにできます。イエローベースも同じです。

 

つまり2通りに分けてしまえば、簡単(かんたん)にきれいな組み合わせができます。 その2つを混ぜない方が、よりきれいな組み合わせができるのです。  

 

同じ景色でも。昼間は青っぽく見えますが、夕方はちょっと黄色っぽく見えます。その青く見える時の色がブルーベースで、黄色く見える時の夕方の色がイエローベース、と考えると分かりやすいかな。ここで休憩(きゅうけい)しましょう。

 

  (休憩)

 

自分に似合う色を見極める 

  ブルーベースとイエローベースについて、色紙を使って説明します。青い紙を2(まい)見せますよ。 同じ青ですけど、こっちが青い青、これが黄色い青。 違うよね。この2つは、同じ青でも仲間じゃない。一緒(いっしょ)に組み合わせたら気持ち悪い色になります。

 

  じゃあ、黄色もやってみよう。青い黄色。黄色い黄色。 これを最初の青い黄色と青い青を組み合わせると、きれいです。青い黄色と、黄色い青、なんとなく気持ちが悪い。黄色い黄色と、黄色い青を組み合わせると、なんとなくきれいです。

 

このようにお洋服の中でも、まぜこぜにしないほうがきれいだし、自分の似合う色をちゃんと見極めて着れば、健康的で、すごく元気よく見えますし、顔色もきれいに見えます。

 

 

色のベースで統一する 

  これからゲームをします。(ふくろ)の中に赤、緑、ピンク、白の4色の紙が、どれもブルーベースとイエローベースの2タイプ、合計8枚入っています。(つくえ)の上の左側に青っぽく見える色をタテに、そして右側には黄色く見える色をタテに(なら)べてみましょう。

 

 (うら)に番号が書いてあるので答え合わせをします。 ブルーベースは3、2、6、8。イエローベースは5、1、4、7です。どうですか。できましたか。すごい正解率です。簡単すぎたかな。

 

 この色紙を使って、色合わせをしてみると、ブルーベースの赤と緑はしっくりしますが、ブルーベースの赤とイエローベースの緑は、気持ち悪い感じになることが分かります。

 

ブルーベースはブルーベースだけで組み合わせたほうがきれい、イエローベースはイエローベースだけで組み合わせたほうがきれい、ということになります。

 

 自分の色の見分け方 

 最後に自分はブルーベースかイエローベースか。その見分け方をちょっとやります。

 

手首の内側の血管が青く見える人はブルーベース、ちょっと緑っぽい人はイエローベースが似合います。目の白目が青い人がブルーベース、黄色っぽい人はイエローベースとも言われています。

 

 もう1つの見分け方は、銀紙と金紙の上に手を置いてみると、銀紙の手の色がきれいに見える人はブルーベース、金紙の手の色がきれいに見える人はイエローベースです。

 

 (くわ)しく調べてみたい方は、パーソナルカラー診断士(しんだんし)門的(せんもんてき)な診断をしていますので、調べてもらったら、これからの人生で有意義な情報になるはずです。

 

 

   質問コーナー ◇

 

  

Q 4年生 先生は、ブルーベース、イエローベースのどちらですか。

 林先生 今日は、自分に似合う服を着てきましたよ。ブルーベースです。ブルーっぽい色、ネクタイもブルーぽい茶なんです。茶色はいろんな要素があるので、判断しにくいかもしれません。  

 

Q 4年生 この前、学校に間違えて妹の服を着て、行ってしまったのですが、どうすればいいでしょうか。(笑い) 

林先生 おもしろい、それがイエローベース、ブルーベースで似合っていればいいと思います。

 

Q 5年生 ブルーベース、イエローベースをやってみたところ、血管が緑っぽいものと、青っぽいものとがあって、どっちか分からない。教えてください。

 

林先生 人の色は、はっきり分かれている人と、意外と近い人がいるのです。(その学生をチェック) ブルーベースです。ブルーベースのお洋服を着るとすごく健康的、かわいらしく見えますよ。

 

Q 6年生 黒のブルーベースはありますか?

林先生 あります。ブルーベースの黒は、光が当たると本当に真っ黒に見える。お父さん、お母さんが結婚式(けっこんしき)に着ていく洋服は真っ黒です。仕事に着るグレーの服はイエローベースの黒もあったりするので、比べてみないと、なかなか判断するのは難しいかもしれません。

 

Q 6年生 好きな色がブルーベースで、自分がイエローベースといった矛盾(むじゅん)することがあると思うんですが、それはどうしてですか。 

林先生 色って、はっきり右左に分かれるものではなく、段階的(だんかいてき)に変わっていくものなので、はっきり分かれていない人にとっては、判断が難しいと言われています。君がイエローベースで、どうしても着たい衣服がブルーベースの場合、顔の近くにもっていかなければ大丈夫(だいじょうぶ)です。例えばズボンとかに自分の好きな色を使うのはOKです。

 

Q 4年生 先生は何色が好きですか。

林先生 好きだったのは黄色ですが、自分がブルーベースだと分かってから、ブルーが大好きです。若々(わかわか)しく見えた方がいいな と思って。

 

Q 5年生 ジーンズは、何色ベースですか?   

林先生 すごくいい質問です。ジーンズは実はインディゴという色がベースです。黄色っぽい青なんです。ブルーベースの人は、なるべく()い目を選んだ方がいいかもしれません。色が(うす)くなっちゃったデニムを着ちゃうと顔色が悪く見えちゃう。私も薄い色のデニムを着るとすごく老けて見えちゃうんで、最近は着ないです。

 

Q 4年生 最初に手の色で、ブルーベース(けい)でしたが、いまはイエローベースみたいですが、どうしてですか。 

林先生 ものの色って、反射(はんしゃ)なんです。同じ色でも黄色っぽい電気の下では黄色くなっちゃう。その色を見る場所でも変わる可能性があります。蛍光灯(けいこうとう)はどちらかと言うとグリーンなんです。蛍光灯の下では健康的に見えないはずです。晴れた日の光で()った方が健康的に見えるはずです。いい質問でした。私の説明はこれで終わり、貞末先生に返します。

 

 

 

素敵なお洋服で人生を楽しく

 

 今日は短い間でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。どうでしたか。お洋服に少し興味を持ってもらえましたか。自分がどっちの色なのか分からなかった人は、出口のところで先生に聞いて、イエローかブルーか知ったうえで帰りましょう。

 

これは一生変わらない自分の色素なので、自分が何色かが分かっていると、将来(しょうらい)、すごく役に立つと思います。お洋服は色と、(がら)と、素材との組み合わせによって、トータルコーディネートがすてきに見えます。自分のベースを知っているとコントロールできると思います。

 

皆さんは大きくなって、おしゃれに興味を持っていただけると、お洋服がすてきに着られるようになり、人生がもっともっと楽しくなると思います。そして、皆さんが会社にお(つと)めになるときには、ぜひ鎌倉シャツのお店で買ってくださいね。今日はどうもありがとうございました。(了)

                       (文責=横川和夫、写真=菊池みどり)