2025年度「子ども大学かまくら」 第2授業
「江ノ電の歴史について」
講師 井口 貴之先生、関口 純先生 (江ノ島電鉄株式会社 本社社員)
2025年7月12日(土) 10時から
鎌倉生涯学習センターホール
(授業レポート)
札の切符切りから駅長に
井口貴之先生
私は藤沢駅で改札の切符切りがスタートです。その後、試験を受けて車掌、さらに勉強して運転士の免許を取り、運転士を17年半務めた後、運転課で9年8ヶ月。それから駅長を5年やりました。なので江ノ電については詳しいです。
江ノ電は鉄道のイメージが強いですが、収益では電車が28%で、54%のバスの方が多いのです。藤沢駅から鎌倉駅まで全長10キロの短い路線に駅が15駅。しかし駅長は一人で、江ノ島駅にいて、15駅を監督しています。
昔は全て手作業でした。今は機械化が進み、駅には列車非常停止押しボタンが設置されています。2023年1月1日午前5時頃、極楽寺駅ホームで土砂崩壊が起きました。たまたま駅にいたお客様が非常ボタンを押して、大事故を未然に防ぐことができました。その非常ボタンが設置されたのが3日前の12月29日。仕事納めで設置されたのでした。
昔は藤沢から鎌倉まで39駅
江ノ電が開業したのは明治35年(1903年)。藤沢駅から片瀬、今の江ノ島駅までです。当時、江ノ島詣では人力車で30分ですが、電車だと10分です。ところが人力車の人たちにとって電車は死活問題、反対の声が出た。そのため路線を道路から少し外して、人力車に迷惑をかけない配慮をしたのです。
鎌倉駅まで線路を延ばしたのは8年後。極楽寺トンネル開削で資金難に直面しました。しかし日露戦争での勝利が、景気と、お参り客の上昇につながり開通が実現しました。当時、藤沢から鎌倉まで39駅あったそうです。
ドラマ「俺たちの朝」で知名度上がる
1964年の東京オリンピックをきっかけに車社会になり、鉄道を利用する人たちが激減しました。その危機を乗り越えることができたのはメディアで江ノ電が取り上げられたことです。1976年に日本テレビが1年間、極楽寺駅を舞台にしたドラマ「俺たちの朝」を放映したことで、江ノ電の知名度が上がり、廃止にならなくてすみました。2022年9月には120周年を迎えることができました。これで私の話は終わり、休憩後は別の人が話します。
(休憩)
日常の中にある非日常が江ノ電
関口 純先生
私は、今の江ノ電についてお話します。皆さんは江ノ電のどこが好きですか。(学生たちから手が上がる)――「自然の中を走るところ」「レトロな感じ」「電車がかわいくて」「車両のデザイン」。「混んでいて嫌い」という意見が出るかと思って心配してました。ちょっと難しいことを言うと、「日常の中にある非日常」を私たちは大事にしてます。車両も、板張りの車両、駅も木製です。車両の掃除も極楽寺で「手洗い」でやってます。これが江ノ電が愛される要素ではないでしょうか。
これからはクイズです。この4桁の数字が入っているグラフは何を意味してますか。「外国人と日本人の数」「バスと電車の売り上げ高」などの声。このグラフは過去10年の輸送人員を表した数字です。よく見ると、2020年の新型コロナ渦で、輸送人員が4割落ちました。つまり4割が観光客だと分かったのです。
一番の悩みは「局所的混雑」
江ノ電の悩みは「局所的混雑」で、観光客の動きがなぜか集中してしまうことです。鎌倉に来る人は5月6月11月に集中、午前11時に来て午後5時に帰る。平日土日の午前中は、鎌倉駅は満員なのに、藤沢駅から乗ると皆座れます。
どうしたら観光客が分散して混雑を緩和できるのか、いいアイデア募集中です。
2026年には20年ぶりに新型車両「700形」が導入されます。
江ノ電は、秋には「江ノ島の湘南キャンドル」などで地域の人たちに楽しんでいただいてます。社員総出で、2週間、毎日1万個のキャンドルに火をつけ、消しています。「こんなことをしたら」というアイデアを皆さん、教えてくださいね。
(文責=菊池みどり、写真=島村國治)