5周年記念シンポジウム


 

子ども大学かまくら 5周年記念シンポジウム(要約)

 

日時:2016年7月23日(土)午後1時半~4時

 

場所:鎌倉生涯学習センター第5集会室

 

テーマ:「次世代を担う子どもを育むために―子ども大学の意義と課題」

 

 スタートして5周年を迎えた「子ども大学かまくら」は、その記念事業の一つとして川越、横浜にある子ども大学の代表を招いて「次世代を担う子どもを育むために―子ども大学の意義と課題」というテーマで記念シンポジウムを開催しました。

 

基調講演は熊代徳彦前鎌倉市教育長、パネリストは川越、横浜、鎌倉で活動している子ども大学の代表3人と鎌倉市市民活動センター運営会議前理事長の4人。梶川牧子・川越市前教育委員会委員長、八神陽介・鎌倉市教育委員会教育部次長らをはじめ、各子ども大学のスタッフ18人も参加しました。

 

シンポジウムはそれぞれの子ども大学が抱えている課題などについて、お互いに情報交換することで、今後の活動での連携と協働を強めていくことを確認、来年もシンポジウムを開催することになりました。

 

 

自分で考え、解決していく力を身につける

 

最初の基調講演で、熊代徳彦前鎌倉市教育長は「子ども大学に期待するもの」というテーマで話をされました。その中で熊代前教育長は「子どもたちは学校と違う雰囲気のなかで静かに真剣に授業を受け、鋭い質問をしている姿を見て、学校以上の勉強をしているという自負心を子どもたちは持っていると感動しました」と、子ども大学の活動を評価していることを明らかにされました。

 

そのうえで「子どもたちは将来、未経験な問題に直面したとき、自分の頭で考え、解決していく力を身につけていく必要がある。その点でその道の専門家がいろいろなテーマで講義をする子ども大学の果たす役割は大きい」と、子ども大学の存在意義を強調されました。

 

「これまで鎌倉の歴史についての授業で、学校で学ぶ歴史とは違う話をされた先生もいましたが、歴史にはさまざまな見方があり、学習指導要領にとらわれずに、これからも子ども大学独自の考え方で進めてほしい」と結ばれました。

 

 

 高校生が先生のユニークな体験学習―子ども大学かわごえ

 

 続いて3つの子ども大学の代表が特色や活動状況を披露しました。

 

まず、2009年3月、日本で最初に子ども大学を開校した「子ども大学かわごえ」の酒井一郎理事長には、ドイツのチュービンゲン大学で誕生した「子ども大学」の目的、仕組みを説明いただきました。さらに「子ども大学かわごえ」については、

 

「川越にある東洋大学理工学部、尚美学園大学、東京国際大学の3校を会場に、今年度は1年に8回の授業を土曜日に開催していますが、毎年、池上彰先生に授業をしてもらっています。今年のトップバッターは漫画家の松本零士先生で、『銀河鉄道999ミッション2016・私たちの宇宙『いのち』への旅立ち』という題で授業をしてもらい、親たちが喜んで聞いていました」

 

上田清司埼玉県知事が子ども大学の活動を全面的に支援しているため、現在、埼玉県内の市町村には教育委員会の主導で50以上の子ども大学が設置されている、という。

 

「かわごえでは、夏休みには工業高校で高校生が先生になって『モノづくり教室』を開いたり、秋には川越総合高校の名細農場で農業体験授業を行ったりしています。今年は親子教学の親子学習セミナーを開く予定です」と、高校とタイアップしてのユニークな取り組みなどを披露されました。

 

  

会場の確保が大変―子ども大学かまくら

 

「子ども大学かまくら」の横川和夫副理事長は、理念、現状、年間授業計画などを説明、かまくらが抱えている大きな問題は会場確保に苦労していることだと説明しました。

 

「大学は鎌倉女子大が一つあるのですが、今までは会場について協力を得られるにはいたっておらず、300人収容可能な鎌倉芸術館小ホール、鎌倉生涯学習センターホールは抽選のため、外れることが多い。その時は円覚寺と建長寺の集会場を使わせていただいたが、今年度から難しくなり窮地に陥った。そのとき助けてくれたのが私立鎌倉学園で、星月ホールを2回使用することができ、ホットしているところです」

 

「会場確保と、いかに魅力ある授業づくりをするかが今後の課題です」と結びました。

 

 

 地域が広すぎ学生募集に苦労―子ども大学よこはま

 

2015年3月に開校した「子ども大学よこはま」の特色は、「ふるさと学」を「横浜学」にして、横浜港の歴史や外国との貿易、商人の話などに力を入れています。内田ふみ子理事長兼事務局長によると、横浜は広すぎるため、学生募集に苦労する、ということです。

 

「横浜には小学校が340校もあり、募集チラシも効率良くするため今年度はマンションなどがある大規模校を30校選んで1学年分のチラシを配ったら100人を超える応募がありました。会場の都合もあり定員70人分を抽選で決め、残り30数人は研究生として、会場が広い場合は声をかけて参加してもらうことにしています」

 

ユニークな点は、授業について1年間の大きなテーマを決めていること。昨年は「いのち」、今年度は「歴史」で、そのテーマに沿った授業を展開しています。

 

「スタートして2年目。あれもしたい、これもやりたいという希望は出るけれど実現するまでに至らず、中長期の計画を立てようと頑張っています」

 

 

 もっと高校やNPO団体と連携を

 

こうした3つの子ども大学の活動を「鎌倉市市民活動センター運営会議」の渡邉公子前理事長は、どのように受け止めたのでしょうか。

 

「鎌倉には子どもに学びの場を提供する活動団体がたくさんあります。秋のゼミ学習で『鎌倉ロボット・ものつくり研究会』と連携されますが、そうした連携活動がもっと増えることを市民は期待しています。その際には学校とは一味違った学びの場、つまり学校とは違う自由な立場で学びの場をつくる必要があると思います」

 

渡邉前理事長によると県立鎌倉高校では、1年生の総合学習「かまくら学」では、生徒320人全員が市民活動を体験することになっている、ということです。

 

「鎌倉には登録されたNPO団体が400、未登録をあわせると800団体もあります。その『かまくら学』の授業で、『子ども大学かまくら』の授業に参加してみたらと呼びかけたら、生徒の1人が参加するそうです。運営にも携わることができたら、次世代につながっていくきっかけになるのではないかと思いました。今後の活躍を期待しています」

 

 年に1回、持ち回りでシンポジウムを

 

休憩の後、パネル討論に入り、会場からもさまざまな意見、提言がありました。

 

「専門家から直接、話を聞くことで子どもたちの好奇心が揺り動かされ、将来、自分でものを考え、ものをつくる力につながることが期待できると思いました。もっと宣伝して子どもたちがたくさん集まることを期待しています」(八神陽介・鎌倉市教育委員会教育部次長)「このようなシンポジウムを毎年1回、持ち回りで開催してはどうか」(矢倉久泰・子ども大学かわごえ事務局長)などです。

 

最後に熊代元鎌倉市教育長が「これから川越、鎌倉、横浜だけでなく、歴史の浅い、深いはありますが、内容の濃い、質の高い子ども大学が増えていくことを期待しています」と総括して、子ども大学かまくら5周年記念シンポジウムは終了しました。(了)

 

 

 

 

注=「子ども大学かわごえ」「子ども大学よこはま」の授業記録、授業計画などについては、それぞれのホームページをクリックしてご覧ください。

 

 

(文責・宇野次郎&横川和夫、写真・島村國治)