2023年度「子ども大学かまくら」
入学式と第1回授業
6月4日(日)午前10時から鎌倉芸術館小ホール
「子ども大学かまくら」は、入学式と第1回授業を6月4日(日)午前10時から鎌倉芸術館小ホールで開催しました。当日は、小学校の多くが振り替え運動会となり、学生60名と保護者と会員とスタッフで参加者は149人でした。
入学式での横川和夫・こども大学かまくら副理事長と来賓の松尾崇・鎌倉市長の挨拶を紹介します。
2023年度子ども大学かまくら開校の挨拶
「好きなこと、興味関心のあることを掘り下げて」
子ども大学かまくら副理事長 横川 和夫
子ども大学かまくらの入学式をこれから行います。皆さんは、今日から1年間、子ども大学かまくらの大学生です。おめでとうございます。松尾崇鎌倉市長には、子ども大学かまくらに対し、いつも何かと心がけていただき、ありがとうございます。
皆さんは小学生と大学生の違いは何か、どこが違うか分かりますか。小学生は日常生活に必要な基本的なことを学びます。大学生は、自分が好きなこと、興味関心のあることについて深く掘り下げて学ぶというところが違います。
皆さんは好きなこと、興味関心あることは何ですか?好きなことがありますか?
私は、小学校3年生のときに、学校で、新聞社の見学に連れていかれて、そこで新聞記者が忙しそうに働いている姿を見て、新聞記者の仕事に憧れました。そして共同通信に入って定年退職して今日に至っています。
子ども大学かまくらの学長である養老孟司先生は、以前、子ども大学かまくらの授業でこんな話をされました。学生の一人が「私は勉強が嫌いなんですけど、大好きになるにはどうしたらいいですか?」という質問をしたんです。そしたら養老先生はこんなふうに言いました。
「一つは嫌いなことはやらないこと。もう一つは、だれもが好きなことがあるはずだ。その好きなことを本気で一生懸命やれば勉強が好きになるんだよ」
私はなるほどと思ったんです。養老先生は、小さい時から虫や魚が大好きで、5歳の時に、お母さんに連れられて鎌倉の海岸に行きました。お母さんがちょっと目を離したすきに、先生の姿が見えなくなった。あわててどこにいるか探したら、川の近くで、小さなカニが砂に穴を掘っているのをじっと見ていたのです。
養老先生は、小学校三年生の時に昆虫に興味を持ち、採っては標本にしました。標本がたくさんたまってくると、この虫はなんていう名前なんだろうと図鑑を調べる。図鑑を調べるためには難しい文章を読まなきゃいけない。大学生になってくると、その虫の種別がラテン語なので、ラテン語を学ばなきゃいけない。そういうふうに、好きなことを追求していくと、嫌いなことも全部やらなければならなくなる。だから好きなことを見つけることが大切だと養老先生は強調されていました。
今から2年前の2021年度第1回の授業でお話された国立遺伝研究所の遺伝学者である桂勲先生は、「五歳の頃、七里ヶ浜で大潮になると、海岸から50m先まで岩が出てきます。岩の間に海水が溜まっている潮溜まりにいる魚を見て『おもしろいなあ』と思ったことで、私の人生は決まりました」
とにかく何か好きなこと、興味関心があることを持つことが大学生の皆さんにとって必要だし、人生が決まってくるのです。
この2月の2022年度第5回授業で話をされた脚本家の今井雅子先生は、今年のお正月に上映された映画「嘘八百なにわ夢の陣」の脚本を書いた先生です。今井先生はこんな話をされました。
「私はよく遊ぶ子でした。本をよく読みました。図書室で借りて多いときは一日に何冊も読みました。よく書く。これも私の特徴でした。小学校6年生から中学3年にかけて、交換日記を何人もの友達とやって、今でも大学ノートが8冊自分の家にあります。交換日記が8冊もある。そのぐらい書くことが好きでした。好きなことが仕事にもなって脚本家になったのです」
今日、お話していただく板生先生も、おそらく好きなこと、興味関心があることが何かあったはずです。もし話をされなかったら、皆さん、質問して聞いてみてください。
「好きこそものの上手なれ」ということわざがあります。皆さんは、子ども大学かまくらの授業で、その道の達人である先生たちのお話を聞くことで、ぜひ好きなこと、興味関心のあることを見つけ、深めてください。
これは2年間の授業を収録した授業記録集です。今回の第5号は、できたばかりです。
私が今、お話したようなことが載っています。ぜひ読んでみてください。私の話を聞いていただいてありがとう。
来賓の挨拶
「視野を広げて考えてみよう」
鎌倉市長 松尾 崇 様
皆さん、おはようございます。鎌倉市長の松尾崇です。
今日は子ども大学かまくらの入学式と第一回目の授業の日です。皆さんは今日から大学生になります。おめでとうございます。こうして皆さんが子ども大学かまくらの授業に参加されるのは、本当に素晴らしいことだと私は感じています。
学びについて皆さんはどのように考えていますか。人それぞれですが、それぞれの学校で学んでいること、遊びながら学ぶこと、そして友達とけんかをすることも一つの学びです。
そういう学びに対して皆さんは、とても積極的です。この子ども大学の授業を通じて、これまで皆さんが知らなかった世界がさらに大きく開けていくことを、期待しています。
一つだけお話をさせていただきます。今日の一回目の授業が、哲学というちょっと難しいテーマになっています。
鎌倉市は共生社会の実現を目指すという、皆さんにとっては、聞いたことがないような条例をつくって市政を進めています。そして、このような街になっています。どういうことかを簡単に説明します。
皆さんはアンパンマンを知っていますね。アンパンマンは良いヒーローで、バイキンマンは悪いやつだと、そんなふうに思っていたりしませんか。
今、世界を見ると戦争が起きてます。ロシアのプーチン大統領はアンパンマンかな?バイキンマンかな?アンパンマンだと思う人?じゃあバイキンマンだと思う人?ありがとう。 ちょっと難しいテーマで誤解があってはいけないんですが、ロシアとウクライナは戦争していますが、ロシア側から見ればプーチン大統領はアンパンマンに見える。ところがウクライナや日本から見ると、ゼレンスキー大統領がアンパンマンに見えているんじゃないかな?何が言いたいかと言うと、私たちが見る景色は、見る場所によって、それぞれ見え方が違うということです。
こういうことは、いろんなことに当てはまります。皆さんは友達とケンカしたとき、自分は絶対悪くないと思います。でも、きっと相手もそう思っているんです。
こういう問題を一度ちょっと立ち止まって考えてみようということが、鎌倉市で今設定している共生社会の実現を目指す条例に書いてあります。
世の中には、良い悪いという二者択一ではどうしても解決できないことがたくさんあります。そこに当てはめようとすると、むしろ解決ができなくなってしまうことがあります。だから、いったん立ち止まって、少し視野を広げて考えてみることが大切です。
例えばウクライナ戦争では、プーチン大統領は何で戦争を起こしたんだろうか。どういう正義があるんだろう。アンパンマンを見ている人は、どうしてプーチン大統領がアンパンマンに見えるのか、といったようにいろいろと思いを巡らしてみる。
どちらかに同意するとか賛成するということではなくて、どうしてなんだろうっと考えていくことが、とても大事なんじゃないかなと思っています。
この子ども大学かまくらは、そういう気づきとか見方を、たくさん授業の中からいただけるとても素晴らしい場所だと感じています。ですから皆さんが真剣に取り組めば、取り組むほどたくさん得られるものがあるのです。
ぜひこの子ども大学かまくらの授業を通じて、皆さんが大人に成長していけるように頑張ってください。皆さんのこれからのますますの活躍を心から祈念して、開校にあたっての挨拶とさせていただきます。皆さん頑張ってください。