2023年度(令和5年度) 第3回授業

  

 

 

2023年度 子ども大学かまくら第3回授業

「だれも教えてくれなかった音楽のひみつ」

講師 大嶋義実先生(京都市立芸術大学副学長、フルート奏者)

 

910日(日)午前10時から

鎌倉芸術館小ホール

 

 

(授業レポート)

 

 

 ドレミができたのは17世紀

みんなYouTube聴くだけで歌えるけど、伴奏(ばんそう)耳コピできる人ってそうはいてへんな。だから楽譜(がくふ)って便利なんだよね。1011世紀イタリアでできた五(せん)()の最初は四線で、五線になったのが17世紀ぐらい。四線譜の当時はウットゥ、トレーミーファーソーラーって言ってましたが、普通(ふつう)の人はウットゥて発音しにくいから、ドミネ(ラテン語で神様という意味)のドになりました。「1つの歌詞(かし)ごとに1音ずつ上がっていく音の最初の歌詞の頭文字のところをドレミファソラって()ぼう」ということでドレミができました。

 

楽譜のおかげで何百年も前の音楽が聴ける

 

15世紀ごろは合唱もオルガンも教会の中で演奏(えんそう)されていました。オルガンはビブラートがかからないので人間よりももっと(せい)なる楽器だと言われていた。この時代はドレミファソラ。17世紀ぐらいになって、もう1つ音作ろうやないかということでシができた。それによってニ長調とかホ短調とかの調整音楽というのができました。それにふさわしい音楽を作っていこうとした人がバッハです。こうやって楽譜があったおかげで何百年も前の人の音楽が今になって聴ける。

 

人類最初の楽器は4万年前の笛

 

音楽は人間の歴史の中で、どこから始まったんやろ?言葉の抑揚(よくよう)やっていう人もいる。例えば、「今日は暑いな~」っていうのを音にすると、タタタ・タタタタ~になる。ネアンデルタール人は意思を伝えるのにハミングみたいな歌を歌ってたらしい。人類にとって最初の楽器はドイツの遺跡(いせき)から発見された4万年前ぐらいの笛らしい。笛は物質が無いのに音が鳴る唯一(ゆいいつ)の楽器。鳴るのは(ほね)(笛)じゃなくて空洞(くうどう)が鳴るんです。この音って、きっと人間の生きてる世界の外にもう一つ世界があってそこからくるのではと思い、初めてこの世のもっと先にある世界っていうのを笛の音によって人類は知ったんじゃないか。

 

 

過去と未来の音を聞いているから音楽に

日本でも縄文時代の遺跡から出てきた岩笛は神社で神様を()()むときに使います。笛の音っていうのは、たぶんこの世じゃない、あの世にあるものと行き来するために使われてたんじゃないかと言われています。今、()いてる音はその瞬間(しゅんかん)しか聴こえてきてない、音が続くと音楽に聴こえてくるっていうのは、過去の音と未来の音も聴いているから。このことに人類が気づいたときに初めて、人間というのは時間の中を生きている、今ここだけを今この瞬間だけを生きてたんじゃダメなんやということが音楽によって納得(なっとく)できたんです。そして感情とか心は目に見えへん、だから音楽で表現したりしてきたのです。

 

(文責=森 牧、写真=島村 國治)