2024年度「子ども大学かまくら」第1回授業
「薩摩琵琶の魅力を知ろう」
講師 坂 麗水先生(薩摩琵琶演奏家)
6月16日(日)午前10時から
鎌倉芸術館小ホール
(授業レポート)
「耳なし芳一」の怖い話
最初に「耳なし芳一」のお話をします。源氏と平家が戦った壇ノ浦の合戦で、幼い安徳天皇を抱いた尼僧が海に沈み、亡霊となって出る。その壇ノ浦を見下ろす山の上にお寺があり、和尚と盲目の琵琶法師・芳一がいました。ある時、芳一は高貴な方に呼ばれ、壇ノ浦の合戦を琵琶で語ってほしいと頼まれます。それが毎日続き、不思議に思った和尚さんが後をつけたら芳一はお墓の前で琵琶を弾いている。驚いた和尚さんは芳一の体に魔除けのお経の字を書いたけれど、耳は書き忘れてしまう。その夜、亡霊は、お経の字がない芳一の耳を切り落としてしまった。この怖いお話を琵琶で弾いて語ってみます。聞いてください。(・・琵琶演奏・・)
琵琶という楽器
この琵琶は桑の木で、糸は絹糸、バチは柘植でできています。古代のペルシャで生まれ、紀元前にシルクロードを通って中国から仏教の伝来とともに日本に入ってきました。
盲目のお坊さんの琵琶法師は、小さめの琵琶を手にお経を唱え、諸国の出来事を伝え歩きました。1185年に起きた壇ノ浦の合戦の話も各地で評判となり、これを気にした幕府は「これは隠密行動になる」と厳しく管理します。
しかし薩摩藩だけは琵琶法師を大切にしたため、改良された少し大きい形の薩摩琵琶が広がり、武士が琵琶を弾くまで盛んになりました。女性や子どもも弾けるようにと軽くしたのが筑前琵琶です。日本には雅楽琵琶、盲僧琵琶、平家琵琶など5種類が残っています。
(休憩時間) 舞台で学生たちは一人ひとり薩摩琵琶を抱えて弾き方を坂先生に教わる。
「平家物語」の祇園精舎を歌ってみましょう
(先生の弾く琵琶に合わせ参加者が何度も合唱)
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり ・・
これは800年前の昔、鎌倉で琵琶法師のヒットソングでした。町中にこの歌があふれ、今も中学校で習います。諸行無常は、常でない、昨日の今は今日の今と違う、移り変わるという意味です。日本語の素晴らしさです。琵琶は、今日、皆さんが体験したように簡単に弾ける楽器です。これからも楽しんでくださいね。
◇ 質問コーナー ◇ (20人近く出た質問から抜粋)
Q学生 琵琶って名前がついたのはなぜですか?
坂先生 ペルシャで発祥しバルバッドという名前でした。シルクロード通って、中国ではピパってなり、日本には琵琶という漢字でやってきました。
Q学生 世界には何種類の琵琶がありますか?
坂先生 たくさんあります。バルバットが元の琵琶の形。それがヨーロッパではギターになり、リュート、マンドリン、最後にはバイオリンにもなった。だけど発祥したときから変わってない琵琶は日本にあります。
Q学生 琵琶を弾くバチは、なぜイチョウ形なのですか?
坂先生 仏教の影響を受けて、お寺の屋根の飾りと同じ形になっています。このハート型は、心を表しています。どの琵琶にもペルシャの印である月の形がついていて、ペルシャから来た楽器だと分かります。(了)
(文責=菊池みどり、写真=島村國治)