2025年度(令和7年度) 第5回授業

 

2025年度「子ども大学かまくら」第5回授業

 

宇宙(うちゅう)船内のくらしを楽しく豊かにする服づくりに挑戦」

  講師:多屋 淑子先生(日本女子大学名誉教授)

 

2026年2月21日(土)14時~16時

鎌倉学園中学校・高等学校 星月ホール

 

 

(授業レポート)

 

 ◆衣服が人類の世界進出で果たした役割やくわりは?

被服学(ひふくがく)の基本として、10万年前のアフリカに始まった人類の世界進出を辿(たど)りながら、衣服の果たしてきた防寒具、狩猟(しゅりょう)具、自己(じこ)表現手段(しゅだん)としての役割などを確認(かくにん)した。特に、衣服は身体周囲に外環境(かんきょう)とは(こと)なる小さな環境を作ることになり、その素材、空間の工夫で着心地が調整できるということが強調された。

 

あらためて衣服の機能を整理すると

 生存(せいぞん)、生活環境の拡大、社会生活への適応に関して、

権威(けんい)誇示(こじ)/体温維持(いじ)・健康保持・危険(きけん)物質からの保護/身体清浄(せいじょう)/外環境の清潔保持/

社会生活適応/他との識別・自己表現/装う(よそおう)楽しさ

といった衣服の(しょ)機能が整理された。

 

◆国際宇宙ステーション (ISS)とその船内でのくらしは?

 地上400㎞を回るISS1998-2011年に建設され、日本実験(とう)「きぼう」は2010年に完成した。ISS15か国のプロジェクトで、地上と異なる微小重力などの宇宙固有環境下での科学技術実験が行われているが、そこでの暮らしも()小重力、閉鎖(へいさ)環境、多文化の生活環境下での7名の居住となる。

 

暮らしやすい宇宙船内服はどんな服?

宇宙船内での生活に必要な検討(けんとう)項目(こうもく)NASAにより示されていたが、食・住関連や社会心理関連項目があったものの、衣服は(ふく)まれていなかった。そこで、新たに宇宙船内服の開発を目指し、ISSでの生活を楽しく豊かにするための日本の技術課題を検討(けんとう)する研究会を、企業40社と立上げ、宇宙飛行士の協力も得ながら進めた結果、宇宙船内の「安全で快適な日常服」の他8(こう)目が挙げられた。例えば、微小重力環境下での体型変化、特有姿勢(しせい)などによる衣服形状の変化、活動スケジュールや運動への対応等が課題となった。さらに宇宙船内服に求められる14機能が整理され、宇宙の極限環境に適したISS用衣服の具体的要件を定め開発が進められた。

 

そして、実際の各宇宙飛行士に着用された船内服が紹介(しょうかい)された。

 

10分間の休憩時> 

 

開発され宇宙で実際着用された船内服に学生たちが直接()れる機会が設けられた。

 

◆宇宙船内服のためにどんな技術開発が?

 船内服に求められる14機能のうち、運動着についての難燃性(なんねんせい)(きゅう)(かん)(そっ)乾性(かんせい)を綿繊維(せんい)(あわ)せて用いる新たな中空を有するポリエステル繊維、また軽量・コンパクト化のための縫い目も()い代もない無縫(むほう)製衣服、船内ズボン用の消臭(しょうしゅう)抗菌(こうきん)・静電気防止効果を加えた機能性繊維、そして微小重力のために物を仮置きする手段(しゅだん)としての面ファスナーの開発などが紹介された。

 

大学での研究の一端(いったん)も紹介

パラボリックフライトと()ばれる航空機活用でつくられる微小重力環境での生体・感覚・衣服情報取得実験や人の皮膚(ひふ)温を真似できるサーマルマネキンによる衣服の保温性評価研究が紹介された。

講演の後には子ども達と講師の間で一問一答が行われた。

 最後に、講師の参画も得て、年間の修了式が行われた。

<了>

 

(文責=中村和男、写真=島村國治)