2019年度(令和元年度) 第1回授業

  

 

2019年度(令和元年度)子ども大学かまくら第1回授業 

 

「脳と香り、そして睡眠」

 

講師 古賀(こが) 良彦(よしひこ)先生  杏林大学名誉教授・精神科医

 

  

2019年度6月16日(日)10時~12

鎌倉芸術館小ホール 

 

 

(授業レポート)    

 

 

 

小学生の1日が基本

 

おはようございます。今日の話は「(のう)(かお)り、そして睡眠(すいみん)」です。

 

1日を小学生のように、きちんと生活すると、夜はちゃんと(ねむ)られます。

 

 ちゃんと()ると、前の日の体の(つか)れがとれるだけでなく、体が元気になる。しかも、心がとても健やかになる、これはみんな毎日、経験していることです。毎日、そんなことは当たり前だと思ってやっています。

 寝る前は気持ちがつらく、いろんなことが心配でも、朝起きると(わす)れてしまうだけでなく、元気になっています。これも睡眠の大切な役割(やくわり)ですね。

 

 

記憶(きおく)取捨(しゅしゃ)選択(せんたく)をするレム睡眠

 

睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠の2つがあり、一晩(ひとばん)にレム睡眠と、ノンレム睡眠をくり返しながら朝になる。大人はレム睡眠が2(わり)、ノンレム睡眠が8割であることがわかっています。つまりレム睡眠では、夢を1時間見ています。夢を見ていないと思っていても、実際には夢を見たことを忘れているだけなのです。

 

実は夢を見ている間に必要な記憶はしっかり脳に(きざ)み込んでおく。そしていらない記憶は()てています。だから夢を見る睡眠は、とっても大事な睡眠なのです。ノンレム睡眠は夢を見ていない睡眠なので深い睡眠です。脳がしっかり休んでいる時間です。

 

 

 

睡眠と覚醒(かくせい)はコインの(うら)

 

 睡眠と覚醒。覚醒という言葉は目がしっかりと覚めていることです。一日の生活、つまり睡眠と覚醒は、コインの裏表の関係で、切り(はな)して考えることはできません。昼間、しっかりと起きて脳を働かせておくと、夜にはゆっくり脳が休まる、そして必要な記憶がしっかりと脳に刻み込まれるのです。

 

そのために、いろんな工夫をするのだけれど、その工夫が本当に脳に効いているのかをどうやって調べるのか、その証拠(しょうこ)は確かなのかというお話をしておきます。

 

 

 

 

 

  

 

検査でわかる脳の働き

 

 脳の働き具合を調べるための方法はいろいろあります。

 

一つは脳波で脳の働きを確認(かくにん)します。もう一つは脳の血のめぐりを見たりするニルス(NIRS)という装置(そうち)です。

 

 この画面のお姉さんは、計算問題を解いています。計算するには脳が一生懸命(けんめい)働かなきゃいけない 。そのために必要なのが酸素とブドウ(とう)です。このニルスは、脳が酸素をどのくらい使っているかを調べる装置です。つまり酸素をたくさん使っていれば、脳がしっかりと働いていることがわかるわけです。

 

 もう一つは脳波を調べる方法です。アルファ波がたくさん出ていると、しっかり目が覚めていて、しかも順調に脳が働いていることがわかります。

 

さらにもう一つP300という脳波を検査して脳の働きを調べます。300は、物事を見極め、決断するときに出る脳波を測定します。

 

皆さんが自転車で交差点を横断するとき、赤信号だったら止まる、青信号だったらペダルを()んで進み、横断します。赤か青かを自分の目で見極め、自分がどうするかを決断するときに出る脳波です。

 

 学校の授業でも先生の話を聞いて、しっかり見極めると、P300の脳波は大きく出てくるけれど、ぼんやり聞いていると300の脳波は小さくなっちゃうのです。

 

 

 

脳の活性化には13

 

 それでは次に、どうすれば脳の働きをよくすることができるのか。朝起きて夜寝るまでの生活を中心に考えてみましょう。

 

 まず朝、しっかり目が覚めること、目が覚めたら、お日さまの光を浴びること。そして何より大事なのはね、ちゃんと1日3食きちんととることです。そうすると脳はその日1日、きちっと働ける脳、勉強できる脳の状態になっています。

 

これは朝、水だけ飲んだ人とヨーグルドを食べた人の、どちらが脳の働きがよいかを図にしたものです。当然ですが、ヨーグルドを食べた人の300の脳波は高くなっています。アルファ波も同じです。朝食を()いたりすると脳の働きが悪くなります。

 

そして大切なことは、目を覚まし続けるためには、太陽の光、ブルーライトを浴びることです。外で遊んだり、運動したりすることが脳の働きをよくします。

 

  

脳の働きをよくする青魚

 

 次に何を食べたら脳の働きにいいのか、という話をしましょうね。 サバとかイワシの青魚の中にたくさん入っている栄養素、DHA(ドコサヘキサエン酸) とか EPA (エイコサペンタエン酸)が、脳の働きをよくします。それを、ニルスを使ったテストでわかったのです。そのテストをこれから皆さんにやってもらいます。

 

テストは(むずか)しいよ。画面に1から9までの数字が次々に出てきます。

 

3という数字が出てきました。その2つ前の数字が偶数(ぐうすう)だったら拍手(はくしゅ)します。

 

例えば、453って数字が出てくる。3が出て2つ前の数字を覚えていて、4だったら拍手します。いいですか。9、6、3――どうしますか? 拍手はしないね。はい。87 、3。 また3が出た。(拍手)そうです。

 

このテストの結果で、3ヶ月間、青魚を食べ続けた人の脳の働きが、食べなかった人よりも、しっかり働いていたことがわかりました。 DHAEPA をとると記憶がよくなり、問題がしっかり解けるようになっていたのです。

 

 

 

香りや紅茶(こうちゃ)も効果を発揮(はっき)

 

 今度は香りが脳に影響を(あた)えるお話です。お姉さんが、男の人と話をしています。女性が香水やオーデコロンをつけているときと、つけていないときに、相手の男性の脳はどのくらい活発に働くかどうかを調べました。その結果は、よい香りがあると男性の脳の働きが活発になったのです。

 

 さらに今度は何を飲めば、脳の働きが活発になるかという話です。皆さんは疲れた時に何を飲みますか。(生徒から「ジュース」「お茶」「ルイボスティー」の声)

 

疲れた時に紅茶、コーヒー、エナジードリンク、そして水のどれを飲むと、脳の働きが元気になるでしょうか。(生徒一斉(いっせい)に「紅茶」の声)そうです。皆さん、よく知っていますね。紅茶が一番、脳に効き目があるのです。 

 

 

 

 

 

(休憩)

 

 

 

においは勉強の邪魔(じゃま)

 

 これからは環境(かんきょう)の問題です。家に帰って勉強しますね。自分の(つくえ)で勉強する人と、リビングで勉強する人、どっちが多いか聞いてみましょう。自分の机で勉強する人。 (生徒挙手) リビングで勉強する人。(生徒挙手)けっこう、多いよね。

 

 リビングは、カーテン、ソファー、じゅうたんなどにいろいろなにおいがしみついています。本人は気が付きませんが、においのなかで勉強しているのです。

実際に、においのしない場所と、カビや(あせ)とか体のにおいなどがするなかで、計算問題を解いてもらいました。そしたら、においがするリビングで学習する時は、やる気が出ないし、実際に計算力が落ちてしまうということがわかりました。だからリビングで勉強する時は、においを消して、勉強してくださ

 

ストレス解消に3つのR

 

脳を元気にすることが、夜ぐっすり寝るための条件です。ところが昼間、元気になっても、学校で(いや)なことがあったりすると、よく眠られないということになります。

 

 そんな嫌な気持ちを消す、ストレスを解消するための工夫が必要です。どんなことがいいのかを紹介(しょうかい)しておきましょう 。それは3つのRが大切です。

 

1つはレスト(Rest)。お休みを取る、よく寝ることです。2番目はリラクゼーション(Relaxation)、体も気持ちも楽になります。そして、もう一つ大事なのがリクリエーション(Recreation)です。

 

 

 

寝る前に()り絵を15

 

 最近、大人にも流行っているけれど、塗り絵をやってみることです。塗り絵は準備も片付(かたづ)けも(かん)(たん)で、15分くらいで脳がちょっと元気になる、そしてストレスがとんでいって、夜、よく眠るということになるのです。

 

塗り絵をする時の脳の働き方を分析してみると、脳のあらゆるところが、バランスよく働くのです。しかも楽しく、一生懸命やりたくなると、一瞬(いっしゅん)、ストレスから離れることになります。これで気持ちが楽になってよく眠ることができます。

 

塗り絵じゃなくても、ウクレレを()く。何だっていい。毎日できて、用意も片付けも簡単で、しかも15分もやればちょっと満足できて、お金もかからない、そんなことを寝る前に習慣つけて、すればいい。鏡文字を紙に書く、また右手の親指だけを最初に折って、あとは両方の指を同時に折っていく遊びもおもしろいですよ。これを毎日続けることが大切です。

 

 

 

布団の中で「あー、あー」と声を出す

 

 最後に布団に入ったら、または、布団に入る前にどうすればいいかを2つだけ紹介して話を終わりにしたいと思います。

 

 寝る前に予習、復習したりとか、 歯を(みが)いたりします。それを毎日、同じ順番でやることをお(すす)めします。寝るための儀式(ぎしき)です。いつも同じ順番でやっていると、脳がその順番を覚えて、最後の儀式が終わると、寝ちゃうというクセがつくのです。

 

 ジャンプの高梨沙羅選手は、寝る前に何をするかを決めて、毎日、それをくり返しています。そうすると、世界各地を遠征しても、時差が気にならず、布団に入ったらすぐ寝られると朝日新聞に掲載(けいさい)されていました。

 

良く寝られるための呼吸(こきゅう)法があります。眠れなくて布団の中に入っていると思ってください。(ひざ)を立てて「あーあー」って6秒から8秒かけて小さい声を出す。声を出す時って息を()いています。すると自律(じりつ)神経のなかで、体もくつろぐ副交感神経が働いて、神経のバランスがよくなり眠りに(さそ)われるのです。それでは質問を受けます。

 


   質問コーナー ◇ 

 

Q 5年生 レム睡眠の時に急速眼球運動を何でするのですか。

  

古賀先生 なんで急速に目が動くかって、全然わかってないの。(ねこ)と犬がだらしなく眠っている時に、まぶたの上からでもキョロキョロ目が動いているのがわかっているのです。でも、どうして起こるかってことは、今もよくわかってないです。勉強してぜひその理由を解明してください。

 

Q 4年生 寝るときはどういう形で寝たらいいでしょうか。

  

古賀先生 寝るときは、自分の一番楽な姿勢(しせい)でいいのだけど、大事なことは、ちゃんと(まくら)をして寝てくださいということ、これお願いしておきたいと思います。

 

人って寝返りを一晩に20回前後打つので、その時に頭が枕から落っこちないくらいの(はば)、だいたい60センチくらいの枕がいい。それからよく寝るためには、部屋を真っ暗にしないこと。真っ暗にすると、お年寄りになった時に不安になるので、今から準備をするのは早すぎるかもしれないけれど、真っ暗にしなくても眠られるようにしていたら、気持ちが落ち着いてよく眠れるようになります。

 

Q 4年生 寝ている間に妹とかに足とかお腹を踏みつぶされた時があって、よく眠られないのですが。

 

古賀先生 ちょっと答えがわかんないのだけど、妹さんの布団と自分の布団の間に枕を(なら)べて、妹さんがそこでストップするようにとか。(かべ)をつくったらどうですか。                                (了)

 

               (文責=横川和夫 写真=仲島、廣野、他)