2018(平成30)年度 ゼミ学習A

 

 2018年度(平成 30年度) ゼミ学習A

 テーマ「文章を書くコツを伝授します」

  

◆講師;横川和夫先生(子ども大学かまくら副理事長・元共同通信論説兼編集委員)

 

◆開催日時:

1回目 7/27()  10:0012:00

2回目 /30()  10:0012:00

 3回目 /31()  10:0012:00

 

◆場所:NPOセンター鎌倉の2F会議室

 

 

◆受講生 学生9人(5年生5人、6年生4人)

 

◆ねらい

 相手の言うことを理解し、自分の考えを深め、相手に伝える能力が求められている。文章を書くためのコツを3回の連続講座で実習を通して身につけてもらう

 

1回目:文章書きの基本ルール、 身近なテーマで作文①

2回目:作文の添削の解説、 興味・関心テーマで作文②)

3回目:一味違った文章を書くために、 それを踏まえ作文

 

 

 

第1回目

  

 人工頭脳で対応できない文章表現

 

最近、人工頭脳(AI)の進歩は目覚ましく、人間の仕事が将来、奪われてしまい、失業者が大量に出てくるのではないかと心配されています。囲碁や将棋も、AⅠが勝つケースが増えています。しかし、AⅠでは東大入試を突破できないことが最近、判明しました。それは国語、中でも作文、文章表現が、AⅠでは対応できないことが分かったからです。人間のこころ、感情、気持ちに関係することになるとAⅠでは処理できないのです。だからこそ、これからの大学入試では文章表現が重視されてきます。

 

 「文はひとなり」

 

「文は人なり」という諺(ことわざ)があるように、その人の人間性、人間そのものが文章に表れます。いつも考えたり、悩んだり、苦しんだり、苦労した人の文章には深みがあり、読む人を共感させる説得力があります。つまり文章に自分という存在を示さないと、平凡な、おもしろみのない、つまらない文章になってしまいます。

 

自分という存在を示すことは、簡単にいきません。学校の授業で、先生が教えてくれたことを覚え、試験で良い成績を取ることも大切です。しかしもっと大切なことは、常に好奇心をはたらかせ、自分が興味、関心のあることを見つけ、とことん掘り下げていく気持ちがあるか、ないかです。

 

そして、わかりやすい文章、読みやすい文章を書くための約束事を説明し、「夏休み」という題で、400字の作文を書いてもらいました。

 

 

第2回目

 

 最初の1時間は、「夏休み」という題で書いた全員の作文を、名前を伏せてコピーしたのを配り、生徒の皆さんに「良い」と思った作文を2点選び、なぜ良かったかの理由を書いてもらいました。票が集まった2点の作文を、筆者に呼んでもらい、どんな評価がされているかを読み上げ、紹介しました。

 

参加者は、同じテーマでも、いろいろな書き方があるだけでなく、字がきれいなもの、改行がある・なしなど、読みやすく、説得力のある文章について学びました。

 

5分の休憩の後、2回目は「自慢できること」という題で、書いてもらいました。

 

 

 

 第3回目

 

2回目と同じように、前半は、前回の作文をコピーして配り、良いと思った作文を2点選んで、理由を書いてもらいました。後半は「しょうらいのユメ」が題でした。

 

「夏休み」は、かなり抽象的な、広がりを持つ題でしたから、何に焦点を当てて書くかが試されました。それに比べ2回目の「自慢できること」は、自分の得意なこと、好きなことを書けばよいので、楽だったのではないでしょうか。

 

こんな自慢できることが出てきました。

 

「体がかたい」「家にいる2ひきのネコ」「『和』だ。習い事のことだ」「作ること」「そろばんのテストで、すべて、一発合格だったことです」「『子犬のワルツ』がひけたことです」「家で飼っている金魚だ」「だれにも、声をかけることができることだ」

 

 

頭の中でつくり出された物語

 

作文のコツは、出された題にひっかけて、自分の体験を書いて、そのなかに自分の思い、考え、意見をはさみ込んでいけばよいのです。皆さんが書く文章は、いくつかの体験した事実を自分の頭の中で整理して、必要がないと思ったものは切り捨てる。そして伝えたいものだけを集めて、一つのお話に仕上げる。つまり、皆さんの頭の中でつくり出された物語なのです。だから同じ体験をしても、お父さんが書く文章、お母さんが書く文章は、それぞれ違ってきます。その取捨選択が人工頭脳はできません。

 

 

 

 

ゼミ学習を受けてのアンケート

 

最後に、3回のゼミ学習を受けて、文章を書くうえで、役立つと思ったことを具体的に書いてもらいました。授業のポイントをよく把握していることがわかります。

 

Aさん

 ①「思う」や「私」は、そんなに使わないこと②よいん(余韻)をのこすこと(注=結びで決意表明するケースが多いが、本文を読むとわかるので、決意表明は必要ない)③自分のストーリーをつくること④他の人の作品を読むこと

 

Bさん

①だれも思いつかないことを②はじめは「ズバリ」(注=書き出しで、経過説明から入る人が多い。訴えたいこと、伝えたいことをズバリ書いたほうがよい)③「思う「私」「僕」は、あまり使わない④最後は決意表明しない。

 

Cさん

 ①最初はズバリ書くこと②最後の文は、こうしたいなどはいらない③風などがテーマで出た時、それにひっかけて書く(注=百科事典のように、風についての解説はおもしろくない)④他の人が書かないことを書く。おもしろいものなどを書く⑤思う、などはあまり使わない。僕。私も。(了)

 

 

 (文責・横川和夫、写真・島村國治)